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2009/11/22

歯ごたえたっぷり、ゆっくり咀嚼中(11/21)

このところオペラを観る回数が増えた。いや、本当なら日本人であるなら歌舞伎や能・狂言、文楽といった日本古典芸能も嗜むべきなんだろうが、これはまた機会を作ろうと思ってはいるけどなかなか手を出していない。いや、それよりオペラなんである。METライブビューイングなんかのおかげで手軽に観劇なんかできちゃうと本当の舞台でも観てみたくなるんですわ。で、昨シーズンもトゥーランドットやワルキューレを新国立劇場にて観たわけだが、今シーズンもやってきた訳である。演目はベルクの「ヴォツェック」である。これは新ウィーン楽派の1人であるベルクの20世紀オペラの傑作中の傑作と呼ばれる作品。あるクラシック指揮者が「この作品でオペラは終わった。オペラハウスを破壊せよ」と言ったとか言わなかったとか。もっともオペラは死ななかったし、オペラハウスも破壊されなかったが。と言うほどに、音楽史的にもオペラ的にも重要な位置を占めるのである。
そんな作品を上演するのに熱意を注いでいたのが指揮者、若杉弘氏だった。新国立劇場のオペラ部門の音楽監督であった若杉氏の任期の総決算としてこの作品が上演されるはずであったが、その氏はこの7月に亡くなられてしまった。と言う訳でこの作品は若杉氏の遺言的な意味合いもある。私も若杉氏のベルク、ということで期待して前売り券を買った口であるだけに非常に残念な訳であるが、もっとも私もベルクの音楽といったらヴァイオリン協奏曲くらいしか聴いていない訳で、毎度ながら予習一切せずに聴きに行った。
舞台はわずかに2つのみ。一面に浅く張られた水面とわずかに宙にういた家の屋内。この屋内と水面を色んな場面に当てはめて舞台設定は進んでいく。さめた光線とそれを反射する水のさざなみ。反射された光のゆらゆらと揺れる表情がベルクの音楽にはあう感じだ。もっとも、新ウィーン楽派の中で一番メロディを感じられるはずのベルクであってもやはり12音音楽の一端ではある訳で、なかなかに美しく響くのであるが歯ごたえもある。もぐもぐもぐ。と、噛み砕きながら音楽と舞台を聴いていく感じ、ながら見は禁止という感じである。
お話は貧困にあえぐ兵士ヴォツェックは人体実験台の標本をすることで生活の金を得ていた。しかし、そのためか幻覚を見るようになっている。そんなヴォツェックには妻と子(内縁ではあるが)がいるのだがその妻が鼓主長の誘惑から関係を持ってしまう。ヴォツェックは妻と鼓主長が踊っているのを目撃してしまう。そして赤い月を見て錯乱。そのあまり、池で妻を刺し殺し自らも溺死。子供だけが残される。
お話的にはなにも救いのない貧困故おきる悲劇といったところであるか。舞台ではこの一面にはられた水が貧困にはまり込んだ状態を表していて登場人物がちゃぶちゃぶと歩く訳である。視点は主人公ヴォツェックから見た光景なのだろうとは思うのだが、表現的にも抽象的であった具現的であったりといったりきたりする。その点ではこれもやさしい方なんだろうけど歯ごたえあり、もぐもぐ。それでも筋としての話は理解しやすかったが、それでも、あれは何が言いたかったのだろうかという所も色々とあった。うー噛み切れん。
それでも、音楽、舞台とも非常に美しかったことも特筆すべきことだったと言っておこう。この演出はバイエルン歌劇場との共同制作とのことである。観衆的にも非常に好評だった。主役を務めたトーマス・ヨハネス・マイヤーと妻、マリーのウルズラ・ヘッセ・フォン・デン・シュタイネンは歌もあわせて演技でも好演だったと思う。非常に好意的な拍手を受けていた。
こんな演目故、一見さんが見に来るようなプログラムではなかったのだがそれでも劇場は7割がたは埋まっていたような気もする。やはりこの上演は注目されていたのだろう。で、来週はMETライブビューイングで今度はベタに「アイーダ」である。金曜日にはTVでスカラ座の「アイーダ」も見たのだがさて無駄に豪華なMET、どんな舞台装置でおどろかすのであろうか。その意味では今日見た舞台装置。簡素ではあったが、それでも屋内を宙に浮かしながら移動させるという難しいことをやっていたのだ。そして一面の水面。なかなか難しいことをやったもんだ。これならMETでやってもNYの人達にも通用するかなと思ったりもした。もっともMETの連中はヴォツェックなんか見ないか。

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